東海若手起業塾

塾生インタビュー

高橋綾太氏/NPO法人HOMIES(第3期生)

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スポーツジムで耳にした会話が
起業を志すきっかけに

 「市バスの時間だからわたしはそろそろ帰るわね」「今朝は息子が送ってくれたからここに来られたけど、明日は移動手段がないから難しそう」
 昼間のスポーツジムで、少しお年を召した女性たちがそんな会話を交わしていました。そのうちのおひとりは、どうやらリハビリの一環としてジムに通われている様子。その方たちを見て、地域には移動手段に困っている人がたくさんいるのではと思ったのが、起業を考えるようになったきっかけです。
 考えをまとめていく中で、ベトナムの自転車タクシー(シクロ)やタイの三輪タクシー(トゥクトゥク)のような乗り物を活用できればそうした人たちの手助けになるのではと思い、2008年10月にドイツ製の自転車タクシー(ベロタクシー)を購入し、事業を立ち上げました。
 まずは地元の尾張旭市で自転車タクシーの運行を開始。また、イベント利用や広告メディアとしての価値を武器に順調に業績を伸ばすことができ、2010年にスタートしたあいちトリエンナーレでの採用が決まるなど、忙しくも充実した日々を送っていました。

 

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自分たちの手で、地域交通の
グランドデザインを構築する

 事業的には順調であったものの、自分の中では起業のきっかけとなった目的が達成されていないもどかしさもあり、この先も今のままで良いのだろうかという漠然とした不安を感じていました。そんな折、仲間にすすめられる格好で東海若手起業塾に参加することになったのです。
 東海若手起業塾ではまず自身の事業についてのプレゼンを行うのですが、矢継ぎ早に繰り出される質問になにひとつしっかりと答えることができなかったことにショックを受けました。答えられないということはわかっていないということ。その事実を受け入れプライドを捨て、コーディネーターやメンターの方々の助言に耳を傾け、事業計画書を何度も練り直しながら本当に自分がめざしたいもの、めざすべきものを見つける作業を繰り返しました。
 現在の事業の主軸となっている行動調査を開始したのもこの頃です。行動調査とは、お年寄りは日々どんな交通機関を使いどこへ出かけているのか、
困っている人がどのエリアにいて、どんなことに困っているのかといった具体的な内容を洗い出すためのもの。当初は、家から病院、市役所、喫茶店、ショッピングセンターなど、あらゆる場所をベロタクシーで結ぶ未来を描いていたのですが、行動調査を重ねるうち、電車やバス、タクシーといった既存の交通機関とともに地域交通のグランドデザインを構築することが私たちに求められている役割なのだと気づくことができました。それに気づけた瞬間は、本当に目の前が晴れ渡るような気持ちでしたね。
 そうして私が出した答えは、日本の国土や交通事情に即した自転車タクシーを開発し、交通機関や行政と協力しながら自転車タクシーを交通手段として定着させること。いずれはベロタクシーから脱却するというその結論に自分自身が一番驚きましたが、めざす場所がわかってからは考え方がとてもシンプルになりました。
 行動調査は一人ひとりの行動パターンを調べるため、時間も人員も必要です。今すぐにお金を生み出す事業ではないけれど、私たちにはそれをやる責任がある。自信をもってそう答え、行動できるのは、東海若手起業塾での学びが根底にあるからだと思います。
 行動調査のサンプル数は現在700人ほどですが、さらに調査を重ね、将来的には交通移動白書のようなかたちで世に送り出せたらと考えています。

 

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東海若手起業塾で見つけたのは
事業の本質とめざすべき未来

 東海若手起業塾の前後では、本当に考え方が変わりました。事業への取り組み方もまったく違うものになりましたし、もしも東海若手起業塾に参加していなかったらこの仕事を続けていなかったような気がします。
 東海若手起業塾では、事業の本質、めざすべき未来を見つけることができました。本質がわかると自信がつくし、ぶれなくなる。起業は誰にでもできるけれど、私自身がそうであったように、本質がわからないまま事業を続けている人は少なくないと思います。自分自身ととことん向き合うことで着地点を定め、やっとスタート地点に立てたのだと感じています。
 ベロタクシーをきっかけに声をかけてくださる企業も増え、現在はこれまでの事業に加えてイベントそのものの企画や運営、スタッフの派遣なども行っています。これらの事業ができあがってきたのは偶然ではありますが、ひとつひとつの仕事にしっかりと取り組んできた姿勢が評価されてきた結果なのだと嬉しく思っています。
 また、収益を確保できる体制ができたことで、行動調査と新しいモビリティ開発に専念できる環境を整えることができました。
 東海若手起業塾では地域交通のグランドデザイン構築を10年で実現するという目標を立てていましたが、可能であればもう少し早くに達成できたらいいですね。

 

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